ある医師のひとりごと


   インフルエンザ


 この冬もインフルエンザが流行し、皆さんの周囲にも罹患し、つらい思いをなさった方がいらっしゃるかも知れません。いや自分が罹ったというあなた、遅まきながらお見舞い申し上げます。といっても本稿執筆時点では、今期の流行のピークがやっと過ぎたところで、まだまだ発症する方が病院を受診されています。このホームページをご覧になられる皆さんのことですから当然インターネットでインフルエンザに関する情報は得られていることと存じますが、公的機関の発表する流行警報や、マスコミのやたらと恐怖を煽る記事、そして専門知識の垂れ流しに混乱されていらっしゃるのではないでしょうか?

 私ども医師の立場からしますと、我々の生活の場、例えば職場、学校、交通機関、イベント会場などでの各個人の心がけや生活ひとつで流行は防げるんだという認識が大切だと申し上げたい。すなわち、自らの身体を守ることが国民全体をインフルエンザの流行から守る第一歩だということです。

  1) シーズン前にインフルエンザ・ワクチンの予防接種を済ませておく。

  2) 人ごみには出向かない。

  3) 空気の悪い場所ではマスクをつける。

  4) 外から室内に戻ったら、うがいと手洗いを欠かさない。

  5) 急激に高熱が出たら売薬で済ませず医療機関で受診する。

  6) インフルエンザと診断されたら指示通り休む。

 以上をしっかり行えばまずは安心できるはずなのです。

数年前から市町村レベルで公費負担による高齢者への予防接種がひろく行われるようになりました。年取ると抵抗力が衰えて感染しやすいし、罹ったら命取りになるという危機感から接種率も高く、発症率の低減に寄与しているのは間違いありません。またお年よりはよほど元気な方は別として、寒風吹く中むやみに出歩かず、また人ごみは避けるという気遣いもあります。それに引き換え若い世代は、体力に自信があり、予防接種は保険診療の対象外すなわち自費で受けなければならず、平日の昼間にわざわざ予防接種を受けに病院に行く時間もない、といった事情で予防接種を受けずにシーズンに突入し、満員電車に乗って通勤し、人ごみで働き、罹患してしまうのです。

 私ども医療関係者は、一般の方よりも感染のチャンスは圧倒的に多いはずですが、先の1)〜6)に注意していれば、まず罹患せずに勤務できています。とはいえ予防接種は完璧ではありません。その理由は、流行を予測された型と実際に流行した型が不一致の場合がまずあげられますが、接種された方の体内での免疫反応が期待されたほど高まらなかった場合や疲労などで体力が低下していたときに感染したなど、ワクチンのせいにできないケースもあるのです。個人的な見解ですが、高齢者に公的費用が適用されるのなら、働く世代には会社負担で予防接種を奨励してはどうでしょうか。欠勤者も減り、かえって生産性も向上すると思うのですが。

 ここまでは予防についてお話しましたので、診断と治療について、患者さんサイドのコツをお教えしましょう。実はこのようにしていただくと私ども医師が助かるという話です。あなたがここ数日なんとなく気だるいな、風邪でも引いたかなと感じているうちに急に40℃近くの高熱が出た。これはインフルエンザじゃないだろうかと心配になったとします。待てるものなら1日待ってから病院に行ってください。逆に発症48時間以内には必ず受診してください。

 診断キットは発症直後は陰性(マイナス)に出てしまう可能性が高く、またインフルエンザ治療薬はその時期までに服薬開始しないと効果が期待できないからです。そしてインフルエンザであると診断された場合、商品名タミフルという内服薬を投薬されます。1日2カプセル(朝・夕1カプセルずつ)を5日間服用するよう指示されます。ただしすぐには効きません。翌々日になってやっと37℃台まで解熱する程度です。しかしそれまでの高熱に比べればかなり楽になりますので、治ってしまったかのように勘違いして服薬を止めてしまったり、外出や出勤したりしないでください。まだ罹患期間中なのです。あなたの症状を長引かせるだけでなく、他人にうつす可能性があります。薬は5日間きっちり飲みきってください。平熱まで解熱して48時間たってやっと完治したと思ってください。厳格なようですが、ひとりひとりがきちんと対応することが感染症対策の基本なのです。本稿をお読みいただいた方には、次のシーズンには必ずや予防接種を受けていただけるものと期待します。(DR.TM)


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